WeatherCock Vol.2

雲のでき方〜雲(霧)を作る

 

  1. 雲(雲粒)の発生メカニズム
  2. 雲の発生実験
    1. 実験目的
    2. 実験道具
    3. 実験方法
    4. 実験の解説と補足
  3. 結果と考察
  4. 参考文献
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  1. 雲(雲粒)の発生メカニズム

    図1 空気塊の上昇に伴う体積の変化

    1. ピストンを押すと、内部の空気は圧縮され、圧力が高くなる。ピストンを引くと、内部の空気は膨張し、圧力が低くなる。
    2. 大気中を空気塊が上昇すると、(上空の気圧が低いために)ピストンを引いたときと同じように空気塊は膨張し、空気塊の圧力が低くなる。
    <1994 気象の教え方学び方 気象の教室6 より>

     空気塊が断熱的に上昇すると、内部エネルギーの減少に伴い気塊内部の温度も減少する(図1)。この気塊がさらに上昇すると、内部に含まれる水蒸気の一部が凝結して雲粒ができる。この雲粒が集まることで雲が作られている。

     しかし、いつでもこの雲粒ができるとは限らない。雲粒は空気中に浮かぶ塵(凝結核 図2)を核として成長するため、凝結核がないと過飽和状態になっても雲粒はできないことがある*1

    図2 大気中に浮遊している微粒子(上)、及び、大気中の微粒子(下)の電子顕微鏡写真

    a.田園地 b.市街地

    <1984 一般気象学より>


     *1清浄な空気では、過飽和度約2%以上(湿度102% 雲粒半径0.1μm)、もしくは約-20℃以下になると、水蒸気が凝結核の役割をして、自然に雲粒を発生させる。 
     
  2. 雲の発生実験
    1. 実験目的

       前節の雲発生メカニズム(凝結核の有無による雲粒の発生)を実験によって確かめ、可視化する。

    2. 実験道具

       カップ麺のスチール容器(12cm位)、ストロー、中性洗剤(ファミリーフレッシュがよい)、湯、懐中電灯、線香などの煙。(図3a)

    3. 実験方法
      1. スチール容器に湯をいっぱいになるまで注ぎ、中性洗剤を数滴(泡立つ程度)落とす。
      2. 溶液にストローを入れ、シャボン半球(容器と同半径程度)を作る(図3b)。
      3. このとき内部に霧が発生することを確認する(懐中電灯を当てると霧がよく見える)。同時にシャボン半球内に対流が発生していることも確認する。
      4. しばらくたつと霧がすべて消えてなくなってしまう。霧がすべて消えた後、再びシャボン内に息や線香の煙などを注入すると、再び、霧が発生することが観察できる。
         
    4. 実験の解説と補足
      1. 潜在の量は湯の量によって違うので、泡立ち方で量を確認するとよい。
      2. シャボン半球はすぐに割れてしまうので、グリセリンなどを入れると割れない半球ができる。
      3. 内部に霧が発生するのは、息に含まれる炭酸ガスが凝結核となっているためである。
        対流は、湯から出る熱によるものである。
      4. しばらく経つと霧が消える。これは霧が自重で落下したためである。
        息や線香など、いろいろな大きさの凝結核を入れ、実験を繰り返すとよい。

      a.用意するもの

      b.シャボン半球に霧が発生した状態

      図3 シャボン半球に霧を作る実験

      <1994 気象の教え方学び方 気象の教室6 より>

  3. 結果と考察

     この実験によって、雲粒の発生には凝結核が重要な働きをしていることが理解できる。また、空気塊が過飽和状態であっても、内部に凝結核となるものがなければ、雲粒は発生しないことも理解できた。

     実際、大気中には、陸上で吹き上げられた土壌粒子や波しぶきで舞いあげられた海塩粒子、火山灰や人間活動による排気ガスなどが、凝結核として存在している(図2)。

     この実験では、雲粒ができた後、衝突併合する事によって雲粒が成長し、落下している様子は残念ながら見ることができなかった。参考文献1によるとこの過程を見ることができる実験装置が掲載されているのでそれを図4に示す。

    a.実験装置の模式図

    b.成長した雲粒が落下する様子

    図4 落下する雲粒を観測する実験

    <1994 気象の教え方学び方 気象の教室6 より>

     

  4. 参考文献

    気象の教え方学び方 気象教室6

    名越利幸・木村龍治
    1994
    東京大学出版会

    一般気象学

    小倉義光
    1995
    東京大学出版会

    気象の事典

    和達清夫
    1995
    東京堂出版

    図解 気象の大百科

    二宮洸三・新田尚・山岸米二郎
    1997
    オーム社